映画『Synonyms(シノニムス)』の概要
監督 |
Nadav LAPID |
制作年 |
2019 |
国 |
France/Israel/Germany |
ジャンル |
Urbanization · Social Criticism · Biography · War |
感想
⭐️⭐️⭐️⭐️
『Synonyms』はNadav LAPIDが監督を務め、ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した作品です。故郷を捨てフランスに渡ったイスラエル出身の主人公の物語を描いています。イスラエル人としての自分を嫌い、アイデンティティを捨ててまで必死にフランス人になろうとする青年の姿を通して、彼がそれほど嫌うイスラエルとは何かを考察する映画となっています。
監督のNadav LAPIDはCine21のインタビューを通して、本作は監督自身の実体験を元に製作した作品だと述べています。監督は、イスラエルのテルアビブ大学で学んだ後、兵役のためフランスを訪れた経歴があります。その後、母国イスラエルに戻り、哲学や小説を学ぶさなか、神の導きでイスラエルを去る決意をしたと言います。フランスに再度入国した後、フランス語を必死に覚えイスラエル人としての自分のアイデンティティを捨てようとした監督自身の経験が、映画にも反映されています。
近年、イスラエルではフランスなどヨーロッパ各国からのユダヤ系移民が増える一方、故郷を離れヨーロッパやアメリカに移住する人も多いそう。その背景には、イスラエル社会の保守化と貧困格差などがあるといいます。また、イスラエルに住む若者の中には、戦闘などを理由に「テルアビブ(イスラエルの都市)は住みにくい」と考える人が多いとのことです。
個人的に時間の関係上、映画の冒頭部分を見ることができず、主人公がなぜフランスへ移住したか経緯はわかりませんでした😭 恐らくイスラエルの社会情勢や住み難さが起因しているのではないかと推測します。
主人公は母国語のヘブライ語を捨て、フランス人に染まろうとしますが、生活をする中で自分自身のアイデンティティに向き合う姿や葛藤が描かれます。監督もインタビューを通して、「フランスで生活する間、母国語を捨てなくてはならなかったのが一番辛かった」と語っているように、アイデンティティの複雑さと、それを「捨てること」の難しさが映画では表現されていました。