韓国の世界的な大人気K-POPグループ「防弾少年団(BTS)」が「ハングルの日」である10月9日、「韓流とハングルを広げた」として、文化勲章を韓国で授与された。
BTSといえば先週、国連で「自分自身を愛そう」と、暴力とあらゆる抑圧に抵抗する人たちを応援する演説を行い話題になったばかりだ。演説の内容は、BTSの「IDOL」歌詞と一致しており、BTSのことなどまったく知らなかった私は、ネイティブな英語を操り、リアルと音楽性がシンクロした真っ直ぐなBTSリーダーRM姿に胸を打たれてしまった。
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アジア圏のアーティストで史上初
今年BTSは、アメリカの週間アルバムチャート「ビルボード200」初登場1位という韓国人アーティスト史上初の快挙に輝き話題となった。過去に坂本九の「スキヤキ」がシングル1位、PSYの「江南スタイル」が同じく2位を獲得したが、BTSのようにアルバムチャートでの1位はアジア圏史上初。非英語圏の言語アルバムでは12年ぶりらしい。
オルスジョッタ問題
日本の文化で例えると「わっしょい!」「らっせら!」といったところか。今まで、まったく歌を聴く機会がなかったので、この際聴いてみようと思いユーチューブで「IDOL」を聴いたが、勢い重視のダンスソングであるためか聞き取れない歌詞が多かったので、その歌詞を下記の表にして眺めて見たら、とてつもなくポジティブな自己肯定ソングであることがわかった。特にユニークなのは「オルス・ジョッタ」「チファジャ・ジョッタ」など、韓国の古く伝統的な掛け声(チャンダン)のフレーズが散りばめられている点だ。トロットやポンチャクを感じるそれらのサビのフレーズが、ダンスのリズムで大胆にアレンジされ、古さはまったく感じない。演歌や古い歌もかつてはこう聞こえていたのではないだろか、と感じ入ってしまった。
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BTS「IDOL」の歌詞と和訳
では、IDOLの歌詞の詳細をみてみよう。「俺をアーチストと呼んでいい」から始まるこの歌詞、アーチストともアイドルとも思っていない「自分」は名前がつけられないたった一つのもの、時にはランニングマンや別人格にもなる自分も肯定し、タイトルを「IDOL」=偶像としている皮肉。
そして、 PVに散りばめられた原色・蛍光色の中になんの違和感なくアジアの伝統を落とし込みながら、LGBT運動やフェミニズムを感じる演出や、終盤の獅子舞とヘルメット姿の乱舞には台頭するアジア全域から、眠っていた獅子が起き上がったような波を強く感じる。
そのほかにも意味深なキーワードやシーンが多く、全てを解釈するには時間がかかりそうなので、言葉にでき次第このブログを更新して、ひとまず歌詞を置いておきます。
歌詞 | 和訳 |
---|---|
You can call me artist | 俺をアーティストと呼んでいい |
You can call me idol | アイドルでもいい |
아님 어떤 다른 뭐라 해도 アニム オットン ダルン ムォラ ヘド | いやどんな呼び名でも |
I don’t care | 気にしない |
I’m proud of it | 誇ってるし |
난 자유롭네 ナン チャユロムネ | 自由だっつって |
No more irony | これ以上の皮肉はない |
나는 항상 나였기에 ナヌン ハンサン ナヨッキエ | 俺は常に俺だから |
손가락질 해 ソンガラッチル ヘ | 後ろ指してみやがれ |
나는 전혀 신경 쓰지 않네 ナヌン チョニョ シンギョン ッスジ アンネ | 俺はまったく気にしない |
나를 욕하는 너의 그 이유가 뭐든 간에 ナルル ヨカヌン ノエ ク イユガ ムォドゥン ガネ | 悪口の理由が何だろうと |
I know what I am | 俺は俺が何者かを知っている |
I know what I want | 俺が欲しいものも |
I never gon’ change | 俺は絶対に変わらない |
I never gon’ trade | 俺は絶対に妥協しない |
(Trade off) | |
뭘 어쩌고 저쩌고 떠들어대셔 ムォル オッチョゴ チョッチョゴ ットドゥロデショ | 何アレコレ騒いでりゃしゃる |
I do what I do | やるべきことをやる |
그니까 넌 너나 잘하셔 クニッカ ノン ノナ チャラジョ | だから君もちゃんとなさって |
You can’t stop me lovin’ myself | お前には俺が俺を愛するのを止められない |
얼쑤 좋다 オルッス チョタ | オルッス いいね! |
You can’t stop me lovin’ myself | お前には俺が俺を愛するのを止められない |
지화자 좋다 チファジャ チョタ | チファジャ いいね! |
You can’t stop me lovin’ myself | お前には俺が俺を愛するのを止めることはできない |
Oh oh oh oh | |
Oh oh oh oh oh oh | |
Oh oh oh oh | |
덩기덕 쿵더러러 ドンギドッ クンドロロ | |
얼쑤 オルッス | |
Oh oh oh oh | |
Oh oh oh oh oh oh | |
Oh oh oh oh | |
덩기덕 쿵더러러 ドンギドッ クンドロロ | |
얼쑤 オルッス | |
Face off 마치 오우삼 ay Face off マチ オウサム ay | Face off まるでジョン・ウー |
Top star with that spotlight ay | スポットを浴びるトップスター |
때론 슈퍼히어로가 돼 ッデロン シュポヒオロガ ドェ | 時にはスーパーヒーローに |
돌려대 너의 Anpanman ドルリョデ ノエ Anpanman | 返すよ 君のアンパンマン |
24시간이 적지 헷갈림 내겐 사치 イシップサシガニ チョッチ ヘッカルリム ネゲン サチ | 24時間じゃ足りない頭が混乱俺には贅沢 |
I do my thang | 俺はやるべきことをやる |
I love myself | 俺は自分が大好きだ |
I love myself, I love my fans | 俺は自分が大好き、俺のファンが大好き |
Love my dance and my what | 自分のダンスもそれ以外も |
내 속안엔 몇 십 몇 백명의 내가 있어 ネ ソガネン ミョッ シプ ミョッ ベンミョンエ ネガ イッソ | 俺の中には何十何百もの俺がいる |
오늘 또 다른 날 맞이해 オヌル ット タルン ナル マジヘ | 今日は別の自分を迎えろ |
어차피 전부 다 나이기에 オチャピ チョンブ タ ナイギエ | どうせ全部俺なんだし |
고민보다는 걍 달리네 コミンボダヌン キャン タルリネ | 悩むよりそのまま走るんだ |
Runnin’ man | ランニングマン |
뭘 어쩌고 저쩌고 떠들어대셔 ムォル オッチョゴ チョッチョゴ ットドゥロデショ | 何アレコレ騒いでりゃしゃる |
I do what I do 그니까 넌 너나 잘하셔 I do what I do クニッカ ノン ノナ チャラジョ | 俺のやるべきことをやる だから君もちゃんとなさって |
You can’t stop me lovin’ myself | お前には俺が俺を愛するのを止められない |
얼쑤 좋다 オルッス チョタ | オルッス いいね! |
You can’t stop me lovin’ myself | お前には俺が俺を愛するのを止められない |
지화자 좋다 チファジャ チョタ | チファジャ いいね! |
You can’t stop me lovin’ myself | お前には俺が俺を愛するのを止められない |
Oh oh oh oh | |
Oh oh oh oh oh oh | |
Oh oh oh oh | |
덩기덕 쿵더러러 ドンギドッ クンドロロ | |
얼쑤 オルッス | |
Oh oh oh oh | |
Oh oh oh oh oh oh | |
Oh oh oh oh | |
덩기덕 쿵더러러 ドンギドッ クンドロロ | |
얼쑤 オルッス | |
I’m so fine wherever I go | どこへ行っても平気だ |
가끔 멀리 돌아가도 カックム モルリ トラガド | たまに遠回りしても |
It’s okay I’m in love with my-my myself | 大丈夫、俺は自分に恋してるから |
It’s okay 난 이 순간 행복해 It’s okay ナン イ スンガン ヘンボケ | 大丈夫、俺はこの瞬間が幸せ |
얼쑤 좋다 オルッス チョタ | オルッス いいね! |
You can’t stop me lovin’ myself | お前には俺が俺を愛するのを止められない |
지화자 좋다 チファジャ チョタ | チファジャ いいね! |
You can’t stop me lovin’ myself | お前には俺が俺を愛するのを止められない |
Oh oh oh oh | |
Oh oh oh oh oh oh | |
Oh oh oh oh | |
덩기덕 쿵더러러 ドンギドッ クンドロロ | |
얼쑤 オルッス | |
Oh oh oh oh | |
Oh oh oh oh oh oh | |
Oh oh oh oh | |
덩기덕 쿵더러러 ドンギドッ クンドロロ | |
얼쑤 オルッス |
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BTSの国連スピーチ全文(和訳)
2017年からユニセフ(国連児童基金)の国際サポーターとして『LOVE MYSELF (私自身を愛そう) 』キャンペーンを展開しているBTS。今回BTSが参加したイベント「無限の可能性を秘めた世代」は、2030年までに質の高い教育と雇用を促進する運動のひとつ。世界の、時代遅れな伝統や風習にしばられ自由に教育を受けられない若者が、自分の可能性に目を向けるよう訴えるメッセージになっている。
僕の名前は「キム・ナムジュン」です。BTSというグループのリーダーの「RM」でもあります。今日の若い世代のために非常に意味のある場に招待いただき、とても光栄です。
昨年11月、BTSは「本当の愛は自分を愛することから始まる」という僕らの信念を築きながら、ユニセフの「ENDviolence」プログラムと協力し、世界中の子供たちと若者たちを暴力から守るため「LOVE MYSELF」キャンペーンを始動させました。そして僕らのファンたちが、彼らの行動や熱意によって、このキャンペーンの大部分となってくれています。僕たちは本当に世界一のファンを持っています。
自分自身について話すことから始めたいと思います。僕は韓国の、ソウルの近くのイルサンという街で生まれました。そこは湖や丘があり、毎年フラワーフェスティバルも開かれるとても美しい所です。僕はそこでとても日幸せな子供時代を過ごし、そしてただ平凡な男の子でした。夜空を見上げて思いを巡らせたり、少年らしい夢を見たりしていました。僕は世界を救えるスーパーヒーローだ、と想像していました。
僕らの初期のアルバムのイントロの中に「9歳か10歳の時、僕の心臓は止まった」という歌詞があります。振り返ると、その頃から他人が自分のことをどう思っているのかを気にし始め、人々の視線を通して自分自身を見るようになったように思います。夜空や星を見上げることをやめ、空想にふけるのをやめました。代わりに他人が作った型の中に、自分自身を押し込めようとしました。僕は自分の口を閉ざし、他人の声を聞くようになりました。誰も、そして僕自身も、僕の名前を呼びませんでした。僕の心臓は止まり、目は閉ざされました。こうやって僕は、僕たちは皆、名前を無くし、幽霊のようになりました。
でも僕はひとつの聖域を持っていました。それが音楽でした。僕の中で「起きろ、自分自身の声を聞け」と小さな声が聞こえたのです。しかし音楽が僕の本当の名前を呼んでいるのが聞こえるまでに、長い時間がかかりました。BTSに加入する決断をした後でさえ、そこには沢山の障害物がありました。信じられない方もいるかも知れませんが、ほとんどの人たちが僕らには見込みがないと思っていました。ときどきやめたくなることもありました。でも諦めなくて本当に幸運だったと思います。僕、僕らはこのようにつまずいて、転び続けるのでしょう。
今、BTSは大きなスタジアムで公演し、数百万枚のアルバムを売り上げていますが、僕自身は変わらず24歳の平凡な青年です。もし僕が何かを成し遂げたのだとしたら、それはBTSのメンバーがそばにいてくれたからです。そして世界中のARMYたちの愛とサポートのおかげです。
僕は昨日、ミスをしたかもしれません。しかし、昨日の僕はやはり僕です。今日の僕は、これまでの全ての欠点と失敗と共にあります。明日の僕は、もしかすると少しだけ賢くなるかもしれません。そしてそれも僕なのです。これらの欠点や失敗は、僕自身であり、僕の人生の星座を形作る、最も輝く星たちです。
僕は今の自分、過去の自分、これからなりたい自分を愛するようになりました。
最後に一つだけ言いたいことがあります、「LOVE YOURSELF」シリーズのアルバムをリリースし、「LOVE MYSELF」キャンペーンを開始してから、僕らは世界中のファンから印象深いストーリーを聞くようになりました。彼らが人生の苦難を乗り越えるため、そして自分自身を愛し始めるため、僕らのメッセージがどれだけ助けになったのか。それらのストーリーは常に僕らに責任を思い起こさせます。
だから、皆でもう一歩ステップを上がりましょう。僕らは自分自身を愛することを学んだ。だから今皆さんに、自分自身を語って欲しい、と強く望みます。皆さん全員に聞きたいのです。皆さんの名前は何ですか?皆さんの胸を高鳴らせ、心を動かしているものは何ですか?皆さんのストーリーを聞かせてください。皆さんの声と信念を聞きたいです。あなたが誰なのか、肌の色、ジェンダーのアイデンティティは関係なく、自分自身について話してください。自分自身を語ることで、自分の名前、そして自分の声を見つけてください。
僕はキム・ナムジュン、そしてBTSのRMです。韓国の小さな街で生まれたアイドルであり、アーティストです。僕も他の人々と同じように、人生で沢山の失敗をして来ました。僕には沢山の欠点があって、沢山の恐れもあります。でも僕は出来るだけ強く、自分自身を抱きしめようと思います。そして僕は段々と、少しずつ自分自身を愛し始めています。
あなたの名前は何ですか?自分自身を語ってください。
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